顎変形症

反対咬合を治したのにまだしゃくれている?

〜骨格性下顎前突を見逃してはいけない理由〜

※この記事は2026年6月に最新の知見を反映して全面的にリライトしました。

 

反対咬合を治したのに、

・まだ顎が出ている気がする

・横顔が改善していない

・思っていた仕上がりと違う

と感じたことはありませんか?

そこにはそもそもの診断が間違っている可能性があります。

これはどういうことでしょうか?

詳しく解説します。

反対咬合とはどういう状態のことを指すのか?

反対咬合というのは下顎前歯のほうが、上顎前歯よりも前方に出ている状態のことを言います。

 

  反対咬合の原因は実は2つある

反対咬合の原因として、下顎全体が上顎より前に突出している状態(骨格性下顎前突)と、歯の部分だけが前方に突出している状態(歯槽性下顎前突)の2つがあります。

圧倒的に頻度が高いのが骨格性下顎前突です。歯槽性下顎前突は上下顎前突症(いわゆる口ゴボ)の場合にはよくみられますが、反対咬合の場合ではほとんどみられません。

骨格性下顎前突は矢状分割骨切り術で下あごを後方に下げると解決するのですが、このときに歯が生えている歯槽骨の部分だけを後ろに下げる方法(下顎骨歯槽骨骨切り術)を選択してしまった時に“反対咬合を治したが、まだしゃくれているような気がする。。”ということがおきます。

れは、下あごが出ている原因が歯槽骨の部分だけにあるのではではなく、下顎骨全体が前に出ているために反対咬合になっているからです。

下顎骨全体が前に出ている場合は、歯槽骨切り術ではなく、矢状分割骨切り術で下顎骨全体を後方に下げないとよいプロポーションにはなりません。

ではどのように診断すればよいのでしょうか?

当院ではCDS(Craniofacial Drawing Standard)という標準画像を患者さんの骨格と比較することで、出ているのが下顎全体なのかそれとも歯槽骨だけなのかを判断しています。

CDSを患者さんのセファロに重ねた時にB点が標準骨格より前方に位置している場合は、単なる歯槽骨突出ではなく骨格性下顎前突症が疑われます。

カムフラージュ矯正の限界

骨格性下顎前突に対して下顎小臼歯を抜歯し、前歯だけを後方へ移動する方法をカムフラージュ矯正と呼びます。

反対咬合は改善しますが、下顎骨全体の位置は変わりません。

そのため噛み合わせは改善しても、しゃくれた印象が残ることがあります。

自分の反対咬合の原因が歯槽骨にあるのか下顎骨全体にあるのかを簡便に知る方法があります。それは笑った時に顎先の飛び出しがより強調される人は骨格性下顎前突である可能性が高いということです。

そのメカニズムとしては下顎骨全体が前に出ている人が笑った時には口の周りの筋肉が後ろに引かれるので、顎先の骨を包む皮膚が薄くなり、骨の形が強調されて顎先の飛び出しが顕著になるということです。

このような患者さんは、バランスの良い顔貌を得るために、歯槽骨切りではなくSSROやIVROを用いた下顎後方移動が必要です。

反対咬合という診断名だけでは、

どの治療が適切かは決まりません。

大切なのは、

歯が前に出ているのか、

下顎骨全体が前に出ているのかを正しく診断することです。

反対咬合を治したのにしゃくれが残っている方は、

一度骨格から評価してみることをおすすめします。

この記事でわかること

  • 反対咬合を治してもしゃくれが残る理由
  • 骨格性下顎前突と歯槽性下顎前突の違い
  • なぜ正しい骨格診断が重要なのか
大守 誠

大守 誠(おおもり まこと) 形成外科専門医・顎顔面外科医 顎変形症、口唇口蓋裂、顔面骨形成を専門とする形成外科医。 顎矯正手術、頬骨形成術、オトガイ形成術など、顔面骨格に基づいた機能的かつ審美的な治療を得意としています。 特に、口唇口蓋裂に伴う二次変形や、骨格性不正咬合に対する外科的矯正治療においては、顔全体のバランスと長期安定性を重視した治療計画を行っています。 また、美容外科領域においても、解剖学的根拠に基づいた安全性の高い手術を心がけています。 本サイトでは、顎変形症や顔面骨手術の症例紹介、治療の考え方、患者さんに知っていただきたい医学的情報を、専門医の立場から分かりやすく発信しています。

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