顎変形症の治療症例

開咬(顎変形症)の両顎手術|治療計画から術後まで

顎変形症について詳しく知りたい方へ

顎変形症の原因や治療方法については、

以下のページで詳しく解説しています。

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「前歯で食べ物が噛めない」
「いつも奥歯しか当たらない」
このような症状は、「開咬」と呼ばれる顎変形症の一つでみられます。

この患者さんでは、上下の奥歯が先に接触するため、前歯が噛み合わない状態になっていました。

開咬を放置すると、口呼吸の悪化や歯への負担が増え、歯の寿命を縮める原因になることがあります。矯正治療だけで改善できる症例もありますが、骨格の問題が大きい場合には両顎手術などの顎矯正手術が必要になります。本症例では、矯正歯科での精密検査の結果、手術適応と判断され、当科へご紹介いただきました。

診断

術前正面顔貌写真では、軽く口を開けた際の上顎中切歯の露出量は4mmで、標準的な範囲でした。また、フルスマイル時にも歯肉の過度な露出(ガミースマイル)は認めませんでした。これらの所見から、上顎前歯の見え方は良好であり、上顎を大きく上下移動させる必要はないと判断しました。

閉口時の正面顔貌写真では、オトガイ部に皺の形成は認めず、無理なく口唇を閉鎖できていました。(図1)

術前側貌写真では、鼻唇角は標準的であり、鼻と上口唇のバランスは良好でした。

当院では、標準的な顔貌との位置関係を評価するために、CDS(Craniofacial Drawing Standard)という分析法を用いています。患者さんの側貌セファログラムをCDS(標準骨格のテンプレート)と重ね合わせて評価したところ、上顎の前後的位置に大きな偏位は認めませんでした。(図2)

咬合では、臼歯の早期接触によって生じた著明な開咬を認めました。(図3)

手術計画

診断結果をもとに、手術計画を立案しました。

開咬を閉じるためには、臼歯部の早期接触を解消するために、側方からみたときの上顎を少し時計回転させて、上額後方臼歯部を上方に移動させます。奥歯だけを少し持ち上げることで、前歯が自然に噛み合うようになります。

下顎だけを回転させて開咬を閉じる方法もあります。しかしこの方法では後戻りしやすく、再び開咬になる可能性があります。そのため本症例では上顎も同時に移動させて骨格全体を整えることで、より安定した咬合を目指しました。

本症例ではCDSを基準に考えて、上顎前歯部は上方移動させず、臼歯部を約3.2mm挙上する計画としました。(図4)

手術

上顎ルフォー1型骨切り術、下顎矢状分割骨切り術(SSRO)を行いました。実際の咬合を確認した結果、術中の判断で、より安定した咬合を得るために、予定よりわずかに上顎を後方へ移動しました。

術後経過

術後はマイナーなプレート感染を認めましたが、洗浄処置と早期の抜釘で対応し、大きな問題を認めませんでした。

術後1年では顔貌のバランスは良好に保たれ、術前の開咬は改善しました。前歯でもしっかり噛める安定した咬合が得られています。(図5,6,7,8)

担当医からのコメント

この患者さんは術前からバランスの取れた顔貌をお持ちでしたので、バランスを保ったままで開咬をしっかり治すという治療方針で治療にあたりました。

開咬の患者さんでは「噛めるようにすること」だけでなく、「もともとの顔貌のバランスを崩さないこと」も重要です。この症例では、上顎を必要以上に動かさず、奥歯だけを適切に挙上することで、自然な顔貌と安定した咬合の両立を目指した治療となりました。

開咬の治療方法は、骨格や歯並びの状態によって大きく異なります。同じ「前歯が噛めない」という症状でも、矯正治療のみで改善できる場合もあれば、両顎手術が必要となる場合もあります。当院ではCTやセファログラムを用いて詳しく分析し、一人ひとりに適した治療計画をご提案しています。

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大守 誠

大守 誠(おおもり まこと) 形成外科専門医・顎顔面外科医 顎変形症、口唇口蓋裂、顔面骨形成を専門とする形成外科医。 顎矯正手術、頬骨形成術、オトガイ形成術など、顔面骨格に基づいた機能的かつ審美的な治療を得意としています。 特に、口唇口蓋裂に伴う二次変形や、骨格性不正咬合に対する外科的矯正治療においては、顔全体のバランスと長期安定性を重視した治療計画を行っています。 また、美容外科領域においても、解剖学的根拠に基づいた安全性の高い手術を心がけています。 本サイトでは、顎変形症や顔面骨手術の症例紹介、治療の考え方、患者さんに知っていただきたい医学的情報を、専門医の立場から分かりやすく発信しています。

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