※口唇口蓋裂の治療方針や保険診療についての詳しい説明は、
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患者さんは、幼少期に他院で口唇形成術、口蓋形成術、顎裂部骨移植術を受けられていました。その後成長を経て、鼻の変形が気になるようになり、鼻の修正手術を希望されて当科を受診されました。
両側口唇裂では、幼少期に口唇形成や口蓋形成を終えたあとも、鼻の変形が残ることが少なくありません。
特に成人では鼻幅の広さや鼻先の低さ、上口唇とのバランスに悩まれる方が多く、最終的な鼻形成術が必要になることがあります。
【初診時の状態】
両側口唇裂では、鼻が横に広がり、鼻先が下がって見えることが少なくありません。本症例でも、その特徴が明らかに認められました。
また、上口唇は縦方向に短く、組織量が不足しているため鼻の下(人中)が陥没しています。その結果、鼻先と上口唇との距離が極端に短くなり、「笛吹き変形(whistling deformity)」と呼ばれる、両側口唇裂に特徴的な変形を認めました。

【手術計画】
患者さんは口蓋裂の影響で、上顎の発育が悪く、反対咬合を呈していました。顎矯正手術による骨格修正の適応がありましたが、顎矯正手術は治療の負担が大きいこともあり、希望されませんでした。口唇と鼻の修正を行うこととし、以下のような計画をたてました。
1:口唇修正
単に傷跡を修正するだけではなく、短くなっている上口唇を可能な限り延長し、鼻とのバランスを整えることを目標としました。
2:鼻翼幅(鼻幅)の短縮
鼻翼幅は約48mmと著しく広く、日本人の平均(約36mm)に近づけることを目標としました。
3:鼻尖形成
肋軟骨を移植して、鼻先を高くするだけではなく、前方・下方へ適切に移動させることで、両側唇裂鼻特有の平坦な印象を改善することを目標としました。
【術前のシミュレーション】
当院では術前にフォトショップを用いて詳細なシミュレーションを作成しています。
「どこを」「何mm」変えるかを術前に明確にし、その計画を手術中に再現することで、経験だけに頼らない再現性の高い鼻形成を目指しています。
本症例では鼻尖は3ミリ増高して、4ミリ尾側に移動する計画になりました。鼻翼幅は左右6ミリずつ縮小する計画としました。


【手術】
口唇は瘢痕を紡錘形に切除して直線に縫い上げることで、キズ直しと上口唇の延長効果を同時に得ました。
曲がった鼻中隔軟骨を切除して、通気改善の処置を行なったあと、採取した肋軟骨を鼻柱に移植して、鼻尖を高くしながら尾側に移動させました。
手術中には専用の計測器(リノメジャー)を用いて、術前シミュレーションどおりの位置・高さになっていることを確認しながら手術を進めました。
鼻翼は内側(鼻腔底)と外側鼻翼をともに切除して、計画通りのサイズに縮小しました。



【術後経過】
術後に感染を起こしましたが、洗浄処置と抗生剤投与ですみやかに落ち着きました。
鼻幅が改善し、鼻先にも十分な高さが得られました。また、上口唇とのバランスも改善し、両側口唇裂に特徴的な鼻の形態は大きく改善しました。



【シミュレーションどおりの手術になっていたか検証します】
術前シミュレーションと術後写真を比較すると、鼻尖の高さ・位置、鼻翼幅ともにおおむね計画どおりに修正できていることが分かります。


【担当医からのコメント】
両側口唇裂の鼻修正は、形成外科の中でも最も難易度の高い手術の一つです。
両側口唇裂では鼻翼が大きく横に広がる一方で、上口唇は小さく短いため、鼻と口唇のバランスを整えることが非常に難しいという特徴があります。また、鼻先は丸みを帯びて垂れ下がっていることが多く、鼻尖の高さだけでなく位置も適切に再建する必要があります。
そのため、単に鼻を高くするだけでは十分ではありません。「鼻幅」「鼻先の位置」「鼻柱」「上口唇とのバランス」を一つのユニットとして考え、全体の調和を意識して手術を行うことが重要です。
このような難易度の高い鼻形成術では、術前に患者さんと完成イメージを十分に共有することが欠かせません。当院では、フォトショップを用いた術前シミュレーションを行い、「どこを」「何mm」変化させるのかを具体的に設計しています。さらに、手術中には専用の計測器(リノメジャー)を用いて、その設計どおりに手術が進んでいることを確認しながら操作を行っています。
鼻の修正術は、手術回数を重ねるほど瘢痕や組織不足の影響を受けやすくなり、良好な結果を得ることが難しくなります。そのため私は、一回の手術で可能な限り理想に近づけられるよう、十分な計画を立てて手術に臨むことを大切にしています。
一人ひとり異なる変形を丁寧に分析し、鼻全体の構造を土台から組み立て直すことが、自然で長期的に安定した結果につながると考えています。