顎変形症の治療症例

ガミースマイルと口ゴボを両顎手術で改善した症例|上顎前突・シザーズバイトを伴ったケース

※本症例は顎変形症手術(保険適用)として治療を行いました。顎変形症の治療方針や保険診療について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

▶︎ 顎変形症の治療について

診断する

患者さんは、

  • 笑うと歯ぐきが大きく見える(ガミースマイル)
  • 口元が前に出て見える
  • 口が自然に閉じにくい

ことを主訴に受診されました。

ガミースマイルと口ゴボを呈する女性の術前正面写真
ガミースマイルと口ゴボを呈する女性の斜めと側貌写真

診察では、骨格性上顎前突を伴う顎変形症と診断しました。上顎前突と著明なガミースマイルを認め、さらに下顎後退による口唇閉鎖不全もみられました。

横顔では口元の突出だけでなく、鼻翼基部がやや突出しており、中顔面と下顔面のバランスにも問題がありました。また、下顎後退に伴う口唇閉鎖不全(lip incompetence)も認めました。

さらに、下顎歯列の幅が狭く、咬み合わせると下顎の歯列が上顎歯列の内側に入り込んでしまう鋏状咬合(シザーズバイト)を認めました。

シザーズバイトは上下の歯が正常に噛み合わない状態で、食事がしにくいだけでなく、長期的には咬合の偏りや顎関節への負担につながることがあります。

シザーズバイトを呈する口腔内写真

手術計画

当院では、顔貌分析システム(CDS)を用いて、標準的な顔貌との違いを分析し、骨の移動量をシミュレーションしています。

本症例では、上顎はやや前方に位置し、下顎は著明に後退していました。一方、正面像では左右差は少なく、比較的対称性の良い顔貌でした。

そこで、両顎手術により顔貌分析の結果から、口元を自然に改善できる範囲で上顎を後方へ移動し、ガミースマイルを改善するために前歯部を上方へ移動する計画としました。(移動量は後方へ3mm, 上方へ3mm)

また、横顔全体のバランスをより自然に整えるため、オトガイ形成術の追加が必要かどうかは、術中に顔貌を確認したうえで最終判断する方針としました。

顎変形症患者の術前セファログラム
セファロとCDSの重ね合わせ

手術

上顎にはLe Fort I型骨切り術、下顎には下顎枝矢状分割術(SSRO)を施行し、術前計画どおりの骨移動を行いました。

術中に顔貌全体のバランスを確認した結果、より自然な横顔を得るためにはオトガイを前方へ移動させることが望ましいと判断し、6mmのオトガイ形成術を追加しました。

手術計画のシェーマ

術後経過

術後経過は良好で、大きな合併症なく順調に回復しました。術後は咬み合わせも安定し、食事や口唇閉鎖もしやすくなりました。

術後3か月では、口元の突出感とガミースマイルは大きく改善し、口唇閉鎖不全も軽減しました。

横顔では鼻・口唇・オトガイのバランスが整い、自然で美しいフェイスライン(E-line)が得られました。

患者さんにも仕上がりに大変満足していただいています。

ガミースマイルと口ゴボを呈する女性の術前術後比較写真
ガミースマイルと口ゴボを呈する女性の術前術後比較写真
ガミースマイルと口ゴボを呈する女性の術前術後比較写真
ガミースマイルと口ゴボを呈する女性の術前術後比較写真
ガミースマイルと口ゴボを呈する女性の術後正面写真
ガミースマイルと口ゴボを呈する女性の術後側貌および斜位写真
術前後のレントゲン
術前後のレントゲン

担当医からのコメント

本症例では、著明なガミースマイルを改善するため、上顎を後方だけでなく上方にも移動させる必要がありました。

しかし、単純に上顎を後方へ大きく移動させると、中顔面が平坦になり、口元は引っ込んでも老けた印象になってしまうことがあります。

そのため、当院では歯並びだけではなく、横顔全体のバランスまで考慮して骨の移動量を決定しています。

今回は後方移動量と上方移動量のバランスを慎重に検討したことで、ガミースマイルを十分改善しながらも自然な横顔を維持することができました。

顎変形症の治療では、単に噛み合わせを整えるだけではなく、顔貌全体をデザインすることが重要であると考えています。

ガミースマイルや口元の突出は、歯並びだけでなく骨格の問題が原因となっていることがあります。気になる方は一度ご相談ください。

顎変形症について詳しく知りたい方へ

顎変形症の原因や治療方法については、

以下のページで詳しく解説しています。

 顎変形症の治療について詳しくはこちら

今回の症例の矯正治療は卓famillie歯科・矯正歯科で行っていただききました。

手術で良い結果を出すためには、精密な術前矯正治療が必須です。

大守 誠

大守 誠(おおもり まこと) 形成外科専門医・顎顔面外科医 顎変形症、口唇口蓋裂、顔面骨形成を専門とする形成外科医。 顎矯正手術、頬骨形成術、オトガイ形成術など、顔面骨格に基づいた機能的かつ審美的な治療を得意としています。 特に、口唇口蓋裂に伴う二次変形や、骨格性不正咬合に対する外科的矯正治療においては、顔全体のバランスと長期安定性を重視した治療計画を行っています。 また、美容外科領域においても、解剖学的根拠に基づいた安全性の高い手術を心がけています。 本サイトでは、顎変形症や顔面骨手術の症例紹介、治療の考え方、患者さんに知っていただきたい医学的情報を、専門医の立場から分かりやすく発信しています。

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