顎変形症

上顎を後ろに下げる顎変形症手術について

上顎が前に出ていると、口元の突出感(いわゆる口ゴボ)やガミースマイルの原因になることがあります。

このような場合には、上顎を後方あるいは後上方へ移動することで、口元の突出感を改善し、横顔のバランスを整えることができます。

また、開咬症や一部の下顎前突症では、咬合平面を時計方向に回転させる治療計画を立てることがあります。この場合には、上顎の臼歯部を頭側へ挙上する(上方移動する)操作が必要になります。

上顎を後ろに動かす手術は意外と難しい

上顎後退症の治療では、骨切りした上顎を前方へ移動させます。

この場合、上顎の前方には移動を妨げる骨がほとんどないため、比較的スムーズに移動させることができます。

一方で、上顎を後方へ移動させたり、臼歯部を上方へ挙上したりする場合には事情が異なります。

上顎の後方には翼状突起という骨が存在し、さらに周囲の骨との干渉も生じます。そのため、これらの骨の干渉を適切に処理しなければ、上顎を計画どおりに移動させることができません。

上顎を後方へ移動しようとすると、上顎の後ろに存在する翼状突起や周囲の骨とぶつかってしまいます。

そのため、単純に「後ろへ押し込む」だけでは移動できません。

上顎の骨干渉のシェーマ

Total Maxillary Setbackという考え方

当院では、上顎を後方移動させる際に、上顎の後方にある翼状突起を上顎骨と一体化して移動させる方法を採用しています。

この方法は Total Maxillary Setback と呼ばれています。

通常は移動を妨げる翼状突起を、上顎骨と一緒に骨切りして一塊として移動させることで、無理のない後方移動を実現します。

どのくらい移動できるのか

このような工夫を行うことで、一般的には上顎を後方へ約5mm、上方へ約5mm程度移動させることが可能になります。

もちろん症例によって適切な移動量は異なりますが、顎変形症治療で必要となる移動量としては十分な範囲です。

まとめ

上顎の後方移動や上方移動は、単純に骨を動かすだけの手術ではありません。

上顎の周囲にはさまざまな骨の干渉が存在するため、それらを適切に処理しながら移動を行う必要があります。

当院では、Total Maxillary Setbackをはじめとした顎顔面外科的な技術を用いて、安全かつ確実な上顎移動を行っています。

これらの手術によって、口元の突出感やガミースマイルを改善し、より調和のとれた顔貌を目指すことが可能になります。

大守 誠

大守 誠(おおもり まこと) 形成外科専門医・顎顔面外科医 顎変形症、口唇口蓋裂、顔面骨形成を専門とする形成外科医。 顎矯正手術、頬骨形成術、オトガイ形成術など、顔面骨格に基づいた機能的かつ審美的な治療を得意としています。 特に、口唇口蓋裂に伴う二次変形や、骨格性不正咬合に対する外科的矯正治療においては、顔全体のバランスと長期安定性を重視した治療計画を行っています。 また、美容外科領域においても、解剖学的根拠に基づいた安全性の高い手術を心がけています。 本サイトでは、顎変形症や顔面骨手術の症例紹介、治療の考え方、患者さんに知っていただきたい医学的情報を、専門医の立場から分かりやすく発信しています。

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