睡眠時無呼吸症候群に対する外科的治療
睡眠時無呼吸症候群の診断は終夜睡眠ポリグラフィーという装置を用いて行われます。
この装置を用いて、閉塞型呼吸イベント(閉塞型無呼吸+閉塞型低呼吸+呼吸努力関連覚醒反応)が1時間に15回以上観察される場合に、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
睡眠時無呼吸症候群の治療は、装置を用いる方法と手術療法に大別されます。
CPAP療法:鼻に装着したマスクから気道に陽圧をかけて、呼吸の補助を行う治療です。
口腔内装置:下顎を前方にずらした位置で上下の前歯が噛み合うようなスプリント(口腔内装置)を就寝時に用いることで、気道が拡がった状態で睡眠させる方法です。
これらは無呼吸の原因を根本的に解決する方法(根治治療)ではなく、症状を緩和する治療(対症治療)になります。効果を持続させるためには、ずっと装置を使い続ける必要があります。
上下顎同時前進術:Maxillo-mandibular advancement
上あごを10ミリ前進させることで、軟口蓋後方の気道を拡大させます。同時に下あごを前方に前進させることで舌の後方の気道を拡大させます。骨切りは、上あごはルフォー1型骨切り術という方法を、下あごは矢状分割骨切り術という方法を用います。また下あごの先端部(オトガイ)も同時に骨切りして前進させます。上あごを前方に移動することで中咽頭(軟口蓋近辺)のスペースが、下あごを前方移動させることで舌の後ろのスペースが、それぞれ拡大することで呼吸がし易くなります。上下顎同時前進術は睡眠時無呼吸に対する外科治療の中で最も効果の高いものであることが証明されております。上あごが前に突出しすぎて、見た目に問題が起きるようであれば、上あごの4番目か5番目の小臼歯の抜歯を行い、その位置で上あごを分割して、上あごの前方部を後方に移動させて側貌を整える術式を用います。(2-piece Le Fort1)
睡眠時無呼吸に対する上下顎同時前進術は、現在のところは健康保険適用ではありませんので、自費治療となります。明らかに下顎が小さいなどの顎変形症が原因となり、睡眠時無呼吸が起きている場合は健康保険を適用することができます。健康保険の適用については診察後に医師が判断します。
口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)
オトガイ舌筋前進術
受診をご希望の方は、まずは形成外科を受診してください。形成外科で診察を行い、必要がある場合は耳鼻咽喉科でも診察を行います。受診時に睡眠時検査(ポリソノグラフィ)の結果を持参していただくと、通院回数が減らせる可能性があります。