患者さんは他院にて治療を受けていましたが、顔貌の改善を希望して当科を受診しました。
現症
お顔を拝見したところ、重度の上顎後退が認められ、これを修正する必要があると判断しました。口腔内では、上顎後退に伴う反対咬合が認められました。
診断
骨格診断を行い、標準図(白線)と比較したところ、下顎の前後方向の位置はほぼ正しい位置にあるものの、上顎が大きく後退していました。(図の赤線は患者さんの上顎前歯の位置を示します)骨格的に正しい位置に上顎を移動するには、約10ミリの前方移動が必要と判断しました。
手術計画と手術
この距離の上顎前方移動を達成するためには、一期的な前方移動では困難であり、骨延長術の適用が必要です。今回は初回の手術として創外固定タイプの骨延長器を用いて上顎前方移動を行い、一定の期間をおいてから下顎の骨切り術を行い、咬合を合わせる計画としました。
第1回手術(上顎骨切り、骨延長)
延長前と延長終了時のレントゲンを示します。上顎が大きく前方に移動しています。
第2回手術(下顎SSRO)
2ヶ月のインターバルをおいて、延長器を取り外し、上顎をプレートで固定しました。同時に下顎の矢状分割骨切り術を行い、咬合を調整してプレートで固定しました。
術後は上顎と下顎のバランスは大きく改善しました。
鼻形成術
骨切り術から2ヶ月後に、鼻形成術を計画しました。上顎の前方移動に伴い鼻幅が拡がるため、その修正と、丸くて球根状の鼻尖部形態の改善が主な目的です。さらに、鼻根部から鼻背にかけての高さが不足しているため、肋軟骨を用いて隆鼻術を行いました。また、鼻翼基部の高さを出すため、粉砕した肋軟骨を移植しました。同時に、上口唇に脂肪注入を行い、上下口唇のバランスを整えました。
術後経過
術後3ヶ月の写真では、鼻幅が縮小し、鼻尖形態が改善され、鼻根部から鼻背にかけて適度な高さが出ています。鼻翼基部に注入した軟骨と、上口唇に注入した脂肪により、中顔面の陥没感が解消されています。これで大きな手術はほぼ終了し、あとは細かな鼻の修正を行って治療終了となります。